エンレスト錠(サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物錠)


成分名:サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物 

先発品:エンレスト錠

後発品:なし
 


<作用機序>アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI) 

・サクビトリル:ネプリライシン(NEP)阻害作用 

・バルサルタン:アンジオテンシンⅡタイプ 1(AT1)受容体拮抗作用(ARB)


 <予想される疾患>

(50mg)

・慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。

(100mg) 、(200mg)

・慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。

・高血圧症


 <服薬指導> 

【確認事項】 

・初処方の場合、今まで飲んでいた降圧薬の確認。(ACE阻害薬 or ARB) 

・前回処方がACE阻害薬の場合:前回の服用時間から36時間経過してから投与することの確認。

(ACE阻害薬は併用禁忌)

 {もっと詳しく}

現在(2020.11.6)のエンレスト錠の適応は、必ず、ACE阻害薬やARBからの切り替えで使用することとなっている。ARBからの切り替えでは休薬期間の設定はないが、ACE阻害薬からの切り替えでは「ACE阻害薬の最後の投与から36時間あけてから使用すること」とされている。


[効能説明] 

「血圧が高くなることを抑えると共に、心不全の進行を抑えることができる新しいお薬です。」
 


[服用方法説明] 

・慢性心不全

1回50mg で開始し、副作用のために治療が困難でなければ、2~4週間の間

隔で段階的に1回200mg まで増量されます。



[副作用注意] 

・低血圧の確認(血圧手帳でも確認) 

「めまいやふらつきを感じたら医療機関に教えてください。」

 {もっと詳しく} 

エンレスト錠は降圧作用を持つ薬剤の合剤であるため、低血圧が起こりやすい。

 エンレスト錠の中止理由で最も多いのは低血圧である。現在(2020.11.6)まで  (ノバルティスファーマMR) 


<患者さまからの質問> 

Q. 今回から用量が増えました(50 mg→100 mg)。前もらった薬(50 mg)を2倍飲んでもいいの?

A. ダメです。1回100 mg 1錠、1日2回に増やした場合は、それまで処方されていた50 mg錠を1回2錠服用することはせず、新しく処方された100 mg錠を1回1錠として服用してください。

(50mg錠と100mg錠又は200mg錠の生物学的同等性は示されていないため)


 <薬剤師からの質問> 

Q. ネプリライシンとは?なぜ阻害すると心不全に効くの? 

A. ネプリライシンとはナトリウム利尿ペプチド(NP)をはじめとする様々なペプチドを分解する酵素である。
サクビトリルの代謝活性体がネプリライシンを阻害することで、ナトリウム利尿ペプチドが分解されなくなり、循環血中濃度が上昇する。ナトリウム利尿ペプチドは、レニンおよびアルドステロン分泌抑制作用、利尿作用、心室肥大抑制作用、抗線維化作用、血管拡張作用などの多面的な作用を示し、心不全の進行を抑制する。 


Q. ネプリライシン単独ではなく、なぜバルサルタンとの合剤? 

A. ネプリライシンはアンギオテンシンⅡも分解作用を有するため、阻害してしまうと、アンギオテンシンⅡが増えてしまう。そこで、アンジオテンシンⅡタイプ 1(AT1)受容体拮抗作用(ARB)を持つ、バルサルタンと合剤にすることで、アンギオテンシンⅡ増加による血圧上昇作用を抑制している。 


Q. アンジオテンシンⅡタイプ 1(AT1)受容体拮抗作用(ARB)を阻害しても、アンギオテンシンⅡ増えたら同受容体の他のサブタイプに過剰に作用してしまうのでは? 

A. 臨床上の比較試験では他のサブタイプによる副作用など見られていない。(ノバルティスファーマMR) 

『サイト運営者の意見』
アンジオテンシンII対する受容体にはAT1とAT2の2種類のサブタイプがあり、AT1受容体は血管収縮・動脈硬化作用、AT2受容体はその反対の血管拡張・抗動脈硬化作用が主体である。アンギオテンシンⅡが増加し、AT1受容体が阻害されれば、AT2受容体に作用し、血圧低下・抗動脈硬化作用は促進されるからなおさら良いかも。
 


参考: 

薬剤師向け提供情報・資料(ノバルティスファーマ)

患者さま向け提供情報・資料(ノバルティスファーマ)

服薬指導.com

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