漢方が空腹時服用の理由

基本的には漢方の用法は「食間」「食前」となっている。

 食間:食事から2時間ほど後の空腹時のこと。

 食前:食事の60~30分前の空腹時のこと。


なぜ、漢方は空腹時に飲むのか?

単純に食品や食後に服用するほかの薬との相互作用が避けられるという点がありますが、

そのほかにも漢方によって利点があります。


①配糖体成分の効果を高めるため

例:甘草(グリチルリチン)、柴胡(サイコサポニン類)、人参(ジンセノシド類)、大黄(センノシド)、芍薬(ペオニフロリン)

上記の漢方に含まれる有効成分は「配糖体」と呼ばれる形で存在しており、配糖体はそのままでは腸から吸収されません。腸に到達し、腸内細菌に代謝されて糖が外れることで、吸収され、薬効を発揮します。そのため、空腹時は食物に邪魔されず速やかに腸管に到達し、腸内細菌により代謝を受けて効果を発揮しやすくなります。

より詳しく解説すると、食事をすると胃腸内が脂溶性環境になるため、水溶性が高い配糖体は胃腸内に何も食物が入っていない水溶性環境の状態で漢方薬を服用することが良いと考えられます。


②副作用を軽減するため

例:麻黄(エフェドリン)、附子(アコニチン)

アルカロイドである麻黄のエフェドリンや附子のアコニチンは、急激に吸収されると、動悸や悪心などの副作用や中毒症状を生じる恐れがありますが、空腹時服用では食後服用よりも穏やかに吸収されるため安全性が高まります。

アルカロイドは配糖体とは違い、そのまま腸から吸収され薬効を発揮します。アルカロイドは塩基(アルカリ)性であるため、酸性下でイオン型が多くなる空腹時(胃酸の影響)には吸収率が下がりますが、pHが上昇している食後に服用すると、吸収率が上がってしまいます。吸収率が上がると、動悸や悪心、不眠といった副作用が出る可能性があるため、食前に服用する必要があるのです。また、高齢者や胃切除術後の患者だけでなく、胃酸分泌を抑える制酸薬などを服用している場合にも、アルカロイドが吸収されやすくなっています。



<飲み忘れた場合は>

ただし、胃が弱い場合や飲み忘れることが多い場合などの時には、飲まないよりかは食後でも飲んだほうが効果的であろうという考えから、食後服用もあり得ます。食後服用によって効果が差がないという見解もあるため、個々の患者様に合った服薬指導をしましょう。



参考

https://www.kanro.co.jp/sweeten/detail/id=1568

https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=3768

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/ishikawa/cat080/20180806-3/2020121001/



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